みんなが「さみしい」この世界で、私たちが社会としてできること
フラヌール──フランス語で「遊歩者」を意味するこの言葉を店名に掲げた書店が西五反田にあります。
東急目黒線不動前駅より徒歩3分ほどのところに構えるフラヌール書店にて、『孤独の本質 つながりの力──見過ごされてきた「健康課題」を解き明かす』の読書会を開催させていただきました。
事前に本書に目を通してくださった店主の久禮亮太さんは、本書の魅力を次のように語ってくれました。
そんな久禮さんは、本書の目指すところを読み解いて「みんなが『さみしい』この世界で、私たちが社会としてできること」と紹介。そんな柔らかな言葉に導かれてか、この夜は8名の参加者が集ってくれました。
読書会はこんな流れで進みます。
目次をながめて気になったパートを選ぶ
30分間、黙々と読む
読んだパートの内容と感想をシェア
「ポジティブなつながりとは何か?」をテーマに対話
主義主張が反発しても、とりあえずそのまま一緒に歩み続けてみる
各々が関心を持ったパートを黙々と読んだ後、まずは3人一組で内容や感想のシェア。
全体シェアの時間では、ご自身の孤独と回復の体験を語ってくださった方も。
本書の第7章「つながりの3つのサークル」では、以下の3つの同心円で広がる交友関係のバランスを取ることの重要性を説いています。
インナーサークル(内円):互いへの愛と信頼を持って深くつながった近しい友人や親密な相談相手
ミドルサークル(中間円):支援やつながりをともにするカジュアルな人間関係や社会関係
アウターサークル(外円):集団的な目的やアイデンティティを体感する場所として、近隣住民や、同僚や、クラスメートや、知人たちのコミュニティ
この日いちばんの話題の連鎖を生んだのは、第4章にある「白人至上主義者とディナーを」のパートに関連した対話でした。
このパートに登場するデレク・ブラックは、白人至上主義運動「クー・クラックス・クラン(KKK)」の幹部を務める父親を持つ大学生でした。デレクは幼いころからKKKのメンバーに愛され、白人がいちばんであるという思想を疑うことなく育ちました。しかし大学に入って初めて、自分の育ちとは違うコミュニティの人々と触れ合うことになり、徐々に思想を変えていきます。
そんななか、彼の出自を知ったある学生によって、デレクが白人至上主義者であることが大学内で暴露されてしまいます。周囲の学生たちから大きな非難を受けるなかで、彼に手を差し伸べたのが、同じ寮に住むマシュー・スティーヴンソンでした。
マシューがどのようにデレクに歩み寄ったのか、本書から抜粋してみます。
この話を読んだある参加者は、次のような感想を語ってくれました。
この話から何かを思い出したような顔をしたのは、店主の久禮さん。
本書のなかで著者は、歴史家アレクシ・ド・トクヴィルの言葉「政治以前のつながり(prepolitical association)」を引用しながら、次のようにまとめています。
安心安全な対話の場を作る「本」の力──店主・久禮さんより
「思想の違う相手とともにいること」というのは、ときにセンシティブにもなりうる話題だと思います。それでもこの日にオープンに語り合えた背景には、まさに本書のテーマである「つながり」の力が働いていたように感じます。
ある参加者はこのような感想を語ってくれました。
そんな場が生まれたのには「本」の力が作用しているのでは、と久禮さん。
イベントが終わり、後片付けをしていると、一人の参加者があわてた様子でお店に戻ってきました。
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