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「話す」ことに苦労した子どもが、子ども向けプレゼン教育のプロになった――新連載「『好き』を言語化しよう」著者・竹内明日香さんに聞く

4月23日より、新連載『好き』を言語化しようが始まります。

著者は、国際舞台で戦う日本企業のプレゼンを長年支援してきた知見をいかし、4年間で15,000人以上の子どもたちに「話す力」を育む出張授業を届けてきた、一般社団法人アルバ・エデュ代表の竹内明日香さん。

この活動に情熱を捧げるようになったルーツは何か? 話す力、そのなかでも特に「好き」を言語化する力は、今なぜ大事なのか?
連載開始前に、竹内さんに活動の原点から伺いました。

幼少期に話せず、話せるようになり、また話せなくなった経験

―― 竹内さんは、「活動内容を一言で言うと?」と聞かれたら、いつもどのように答えていますか?

竹内 「公教育にプレゼンの授業を導入するお手伝い」ですね。小・中・高・大の学生さんたち向けに「話す力」を育む出張授業をやってきて、この4月からは幼稚園にも本格的に入っていくことになります。

「考える」「伝える」「見せる」という3ステップで教えていますが、最初のステップである「考える」の部分に一番時間を使ってほしいと思っていて、活動説明の図でも大きく見せています。

自分のなかにある、力が湧き出るような情熱とか強い感情に目を向けて喚起させる。それを人にぶつけてどんどん巻き込むことで何かが立ち上がっていく。そういった経験をしてもらいたいんです。

そのために、連載のテーマでもありますけど、特に自分のなかにある「好き」という気持ちを言語化してもらうことを重視しています。

―― 竹内さんがこの活動に従事されるようになった「原点」をお聞かせいただけないでしょうか。

竹内 元々は銀行員でしたが、子どもが生まれて働き方を考えるタイミングで、後輩と立ち上げた会社に転身しました。その後、私が担当していた部隊だけ独立する形で、海外の投資家に金融情報を提供したり、日本企業のプレゼン支援を行うアルバ・パートナーズという会社を立ち上げたんです。

そして5年前、たまたまお客さんに同行した海外のプレゼン大会で、日本人の衝撃的なプレゼン力の弱さを目の当たりにし、「ファイヤー!!」みたいな(笑) 「これは子どものうちから支援しないと大変だ…」ということでお尻に火が付いたんです。

―― プレゼン大会のお話は、初回の連載記事でもう少し詳しく書いていただいてますね。

竹内 当時、私は41歳になっていました。私の父は46歳で亡くなっているんですね。それで、仮に「あと5年後に死んじゃうとしたら」って考え、やりたいことをやらないと後悔するなって思って、そんなときがちょうどそのプレゼン大会のタイミングだったんです。

―― 「プレゼン」「話す力」という分野に竹内さんが特にビビッときたのはなぜだったのでしょうか?

竹内 仕事のなかで、「話す力」がアキレス腱になって案件が取れないという事例をたくさん見てきたんです。本当に、数億、数十億というお金が、目の前でふっと消えて、「えっ!?」っていう…ほとんど決まっていたのに、社長のプレゼンひとつで。

それと、実は私、海外から帰ってきて日本の小学校に入ったとき、自己肯定感が低くて…

―― 竹内さんは昔海外にいらっしゃったんですか?

竹内 はい、幼稚園から小学校3年生まで海外にいました。英語が喋れないのに現地校に入ったので、とても苦労したんです。喋れるようになるまで、しばらく発信ができないつらい状況を過ごしました。

日本に帰ってきたら帰ってきたで、今度は自己主張がすごく強い子になっていました。手を挙げて発信するんですけど、そのたびにみんながシーンみたいな...すごく痛い状況でした。日本語も怪しいし「ガイジン」と言われてからかわれて。

それでそのうち、また発信できなくなっちゃったんですよ。帰ってきたのは3年生の終わりで、6年生のころの成績表に書かれたのが、

「徳山さん(旧姓)は良いことを言っていると思いますが、発表の声が小さくて聞こえません」

そのくらい喋れない子になっていたんですね。ものすごくつらかったんです、そのころ。

―― 揺さぶりがすごいですね。でもそれが、子どもたちの「話す力」を育もうという情熱の源泉になっているんですね。

竹内 はい。大学の就活のころを思い出しても、頑張って大学に入り、本当はとても優秀なのに、話すのが不得意というだけで内定が取れなくて、社会に出ずに引きこもってしまう人がたくさんいました。

ちょっと練習さえすればいいのですが、それに気がつかないまま就活に入って、それまでは自己肯定感も高かった子たちが人生のどん底に落ちてしまう。親戚にもそういう子がいるんです。これって国としても損失ですよね。

かたや、私はたまたま海外や大学でスピーチの授業をかじっていたので、ありがたいことに内定はたくさんいただけました。

人前で喋れるかどうか、プレゼンの教育の有無だけでこんなにも違ってしまう、この落差ってなんなのだろうってそのときも感じていて、それも今の活動の原点になっていると思います。

―― 「話す力」の有無が大きな分岐点になるんですね。

竹内 まさにラストワンマイルなんです。

出張授業の現場では、名前を言うのもやっとのような子もいます。でも、次には棒読みでもなんとか原稿を読めるようになり、やがて原稿を持たないで話せるようになって、最終的には強く発言できるようになって、そういう成長が見られるんです。

いろんな要因で自信がない子どもたちがいますが、それでもちょっと何かきっかけがあると、ブワァァーーーって湧き出るようなものを持っていたりするんですね。

それで、「話す力を育むなら、子どものうちからだ」と思い立ち、子どもたち向けのプレゼン教育事業を行う団体として、一般社団法人アルバ・エデュを立ち上げました。

これは絶対に誰かがやらないといけないんです。

活動を進めるなかで、「このままではいけない」「自分もなんとかしたい」と教育に対する思いを持っておられる方が多いことがわかったので、小・中・高の教壇に立っていただく仲間を増やすべく、認定講師の資格もつくりました。授業プログラムの企画・開発も含め、協力していただける仲間を増やしていければと思います。


「空気を読まない人」を増やす

―― 連載のタイトルは「『好き』を言語化しよう」です。よく「夢を語ろう」は聞くのですが、「夢」ではなく「好き」というテーマであることに、思うところはありますか?

竹内 最初にプレゼンの授業をしたときは、まさに「夢」から入ったんです。けど、アカンと。

「夢」という漠とした言葉で聞いても答えられる子が少なく、きちんと「夢」という言葉を因数分解しなければいけないなと思ったんです。「夢」ってなんだろうと考えて、「実現可能か不可能か」「ポジティブかネガティブか」という二軸で整理してみました。

実現可能でポジティブなものが「夢」。
ポジティブだけど実現しなさそうなことが「幻想」。
実現しなさそうでネガティブなものが「悪夢」。
ネガティブなもので実現してしまうことが「失敗」。

この「実現可能でポジティブなもの」の象限に入るもので、強い言葉でグッとアクセルを踏めるものはなんだろうと考えたときに、「あ、『好き』だ」と。そうすると、「夢」なんていう言葉で聞かれても気づけないけれど、「好き」の種だったらちゃんとみんな持っている、ということがわかってきました。

―― なるほど。連載を読んでくださる方々はおそらく大人だと思うのですが、みんなが「好き」を語れるようになったらどんな世のなかになると思いますか?

竹内 空気を読まない人が増え、今よりは和を重んじないようになるかもしれません。それはこの活動をしていてよく批判される部分でもあります。

「日本ってこんなに心地良い国なのに、みんなが自己主張を始めたら居心地が悪くなるんじゃないですか?」

この質問は200回くらい受けてきました。

でもそうではなくて、みんなが空気を読んで、言いたいことを言えなくて、グッと我慢している世のなかの方がよっぽど居心地が悪いのでは? 思いをすらすらと口にできた方がずっと楽なのでは?と思うんです。

「『好き』って言語化できちゃったら、こんなに楽なんだ」って気づいてほしい。自分の言いたいことを言えて、「そっちの方が楽じゃない」とみんなが気づけて、新たな調和が生まれてきたらいいなって思います。

―― それはそれで自己主張のなかにも調和が生まれてくるかもしれませんね。

竹内 ポジティブなムードになっていくんじゃないかと思います。

これから始まる連載では、「プレゼン」「キャリア構築」「チームワーク」…様々な場面で「『好き』の言語化」がどんな風に役立つのかを考えていきます。読んでくださった方々が「『好き』の言語化」の力を感じ、身近で接する子どもたちの「好き」の気持ちも大事にしてあげるようになっていただけたら嬉しいなと思います。

―― ありがとうございました。

この連載ではリアルな場を使った様々なイベントも交えながら、「好き」の力をみなさんと探究していきたいと思います。1回目のイベントが4月23日(火)に開催されます、ぜひお越しください!

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~竹内さんより~
今回のイベントでは、私どもが普段行っているプレゼン講座をみなさんにお届けします。思いがブラッシュアップされて人に伝わったときの、世界が開かれていく感覚をぜひご体験ください。
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プロフィール

竹内明日香(たけうち・あすか)
一般社団法人アルバ・エデュ代表理事。株式会社アルバ・パートナーズ代表取締役。
東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほフィナンシャル・グループ)にて国際営業や審査等に従事。(株)アルバ・パートナーズを2009年に設立し、海外の投資家向けの金融情報提供や、日本企業向けのプレゼンテーション支援事業を展開。さらに、子どもたち・若者たちの話す力を伸ばすべく、2014年に(社)アルバ・エデュを設立、出前授業や教員研修、自治体向けカリキュラム策定などを精力的に行っている。2019年3月現在、延べ150校、15,000人に講座を実施。2014年、経済産業省の第6回キャリア教育アワード優秀賞受賞。2018年、日本財団ソーシャルイノベーター選出。日本証券アナリスト協会検定会員。

連載紹介

連載:「好き」を言語化しよう
道徳の教科化が始まり、「忖度」が流行語となる時代。善悪の判断や他人への配慮が問われる一方で、飛び抜けた活躍をする人たちはみな、自分自身の「好き」を表明し、徹底的に追い求めている。社会を動かすのは、正しさ以上に「好き」を原動力にしている人たちではないだろうか。
この連載では、国際舞台で戦う日本企業の発信を長年支援し、4年間で延べ15,000人以上の子どもたちに「話す力」を育む出前授業を行ってきた著者が、自らの「好き」を言語化する力の可能性を、プレゼンやチームづくりなどの様々な場面における効用を示しながら探る。

インタビュー:「話す」ことに苦労した子どもが、子ども向けプレゼン教育のプロになった
第1回:なぜ「好き」を語る子どもが「正しい」を語りたがる大人になるのか
第2回:「聴き手のため」を考え抜いたプレゼンは本当に強いのか?
第3回:プレゼンもキャリアも特別なものにできる、「好きのかけざん」の力
第4回:日本の20代の好奇心はスウェーデンの60代並み!?
第5回:「不得意だけど好き」と「嫌いだけど得意」はどちらが強いのか
第6回:強いチームは「苦手」を克服させない
第7回:勢いのある企業が社員の「得意」よりも大事にしていること
第8回:なぜ結婚式の主賓スピーチはつまらないのか
第9回:人に刺さり、人が集まる「S字の自己紹介」
第10回:日本で起業家が少ない、見過ごされがちなもう一つの理由
最終回:「好き」を語る子どもであふれる未来は、私だけの夢ではなくなった
英治出版オンラインでは、記事の書き手と読み手が深く交流し、学び合うイベントを定期開催しています。連載記事やイベントの新着情報は、英治出版オンラインのnoteFacebookで発信していますので、ぜひフォローしていただければと思います。竹内さんの連載マガジンのフォローはこちらから。(編集部より)
気に入っていただけ嬉しいです!引き続き連載をお楽しみください。
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連載:「好き」を言語化しよう

道徳の教科化が始まり、「忖度」が流行語となる時代。善悪の判断や他人への配慮が問われる一方で、飛び抜けた活躍をする人たちはみな、自分自身の「好き」を表明し、徹底的に追い求めている。社会を動かすのは、正しさ以上に「好き」を原動力にしている人たちではないだろうか。 この連載では、...
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