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村瀬俊朗 連載「チームで新しい発想は生まれるか」

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新しいものを生みだすことを誰もが求められる時代。個人ではなくチームでクリエイティビティを発揮するには何が必要なのか? 凡庸なチームと創造的なチームはどう違うのか? 多様な意見やア… もっと読む
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#チームワーク

チームが一体となって動くための「共有認知モデル」(村瀬俊朗:早稲田大学准教授)

チームが一体となって動くための「共有認知モデル」(村瀬俊朗:早稲田大学准教授)

チームが一体となって動くとは、どういうことだろう。
私は普段スポーツをほとんど観戦しないが、たまたまサッカー日本代表の記事を目にし、「チームが一体に動くこと」がいかに結果に直結するかを再認識させられた。

「やっぱりサッカーを知らなすぎるというか。僕らが。」(1)。これは、東京五輪男子サッカー3位決定戦のメキシコ戦で敗れた際の田中碧選手の言葉だ。なぜこのようなことを口にしたのか。田中選手によると、

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仕事のつながり、心のつながり(村瀬俊朗:早稲田大学准教授)

仕事のつながり、心のつながり(村瀬俊朗:早稲田大学准教授)

五月のある夜、ネット論客たちの議論を聞きながら食器を洗っていると、気になる発言が耳に飛び込んできた。

「リモートワークが進むと、仕事の達成度の見える化が顕著になる。今までの社内の無駄話や面倒な人間関係が少なくなり、作業に集中でき、仕事が捗る」

「リモートを活用して効率性を上げられる奴だけが生き残る」

──なぜか彼らの発言が頭から離れなかった。

私は10年以上前からリモートで仕事をしている。

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あなたのイノベーションの支援者は誰か(村瀬俊朗)

あなたのイノベーションの支援者は誰か(村瀬俊朗)

HondaJetが昨今メディアに取り上げられている。エンジンを胴体後部に取り付けずに、主翼上に設置して室内の広さと静けさを確保した画期的な小型ジェット機である。

しかし、このHondaJetは組織の手厚い支援のもとに開発されたわけではない。Hondaの主力製品に資源が集中するために開発資金や人的・物理的機会には恵まれず、社内からは「車会社が飛行機の開発をなぜ行うのか」などの非難があったという[1

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トランザクティブ・メモリー・システムとは何か(村瀬俊朗)

トランザクティブ・メモリー・システムとは何か(村瀬俊朗)

「チームの業績はABCで決まる」

そうチーム研究者の間では言われている。AはAffect(感情)、BはBehavior(行動)、CはCognition(認知)だ。

そしてチーム研究では、行動や感情以上に、認知が重要だとされている。認知の重要性を顕著に示したのが、ノースウェスタン大学のレズリー ・ディチャーチ教授とノースカロライナ大学ウィルミントン校のジェシカ・メスマーマグナス教授による研究だ[

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新結合は「思いやり」から生まれる(村瀬俊朗)

新結合は「思いやり」から生まれる(村瀬俊朗)

「イノベーションは情報や知識の新結合から生まれる」。経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが提唱して以来、時代が移り変わってもこの説は有力である。

これまで知られていた情報や知識が、これまでにない方法で組み合わさることにより新しいものが生まれる。――頭では分かる。だが実現は難しい。

私もイノベーティブな発見を生み出すべく日夜励んでいるが、現実として「これが私のイノベーションです」と言える研究成果は

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「新しいアイデア」はなぜ拒絶されるのか?(村瀬俊朗)

「新しいアイデア」はなぜ拒絶されるのか?(村瀬俊朗)

異質なものの組み合わせから新しい発想は生まれる。だが私たちには、未知の情報や知識を反射的に拒否してしまう、ある心理的作用があるという。その正体とは? どうすれば乗り越えられるのか? 早稲田大学准教授でチームワーク研究者の村瀬俊朗さんが解説する。
連載 チームで新しい発想は生まれるか(村瀬俊朗)

外部のアイデアを拒絶する「NIH症候群」2007年、ツイッター社勤務のクリス・メシーナは、チャットルー

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【編集長×経営学者 スペシャルトークイベント 11/7】(稲田浩×九法崇雄×村瀬俊朗)

【編集長×経営学者 スペシャルトークイベント 11/7】(稲田浩×九法崇雄×村瀬俊朗)

「一人の天才」をチームは凌駕できるのか――? 時代の先端をゆく編集長、気鋭の経営学者が考える、新しい発想を生むチームワーク。

新しい特集や連載を作り続け、世の中の意識や行動を変えることに挑戦し続ける「編集長」という役割。各編集者の個々のクリエイティビティを高めながら、それぞれのアウトプットの和をまとめあげる…

「編集長」とは、トップダウンで物事を力強く推し進めている印象を持たれがちだが、実はチ

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チームの溝を越える「2つの信頼」とは?(村瀬俊朗)

チームの溝を越える「2つの信頼」とは?(村瀬俊朗)

異なる知識をもつ多様なメンバーが集まると、これまでなかった意見やアイデアが出る。しかし、仕事の仕方や価値観の違いは軋轢や不信感を生んでしまう。どうすれば効果的なチームワークを発揮できるか? 日米で10年以上にわたってチームのメカニズムを研究してきた、早稲田大学准教授の村瀬俊朗さんが解説する。
連載:チームで新しい発想は生まれるか

新しい発想が生まれるには、異なる知識との連携が必要である。しかし、

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失敗から学ぶチームはいかにつくられるか(村瀬俊朗)

失敗から学ぶチームはいかにつくられるか(村瀬俊朗)

村瀬俊朗(むらせ・としお)
早稲田大学商学部准教授。1997年、高校卒業後に渡米。2011年、University of Central Floridaで博士号取得(産業組織心理学)。Northwestern UniversityおよびGeorgia Institute of Technologyで博士研究員(ポスドク)をつとめた後、シカゴのRoosevelt Universityで教鞭を執る。2

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なぜピクサーは「チームで創造性」を生みだせるのか?(村瀬俊朗)

なぜピクサーは「チームで創造性」を生みだせるのか?(村瀬俊朗)

アメリカと日本で10年以上にわたってチームワークを研究してきた、早稲田大学准教授・村瀬俊朗さんの連載「チームで新しい発想は生まれるか」。第2回は、創造性を阻害する「思考の枠組み」とそれを打破する方法に迫る。

新しい組み合わせを阻害するもの前回は、異なる情報の組み合わせから創造性は生まれること、そして異なる情報は個人より集団のほうが多く集まることから、チームは個人の創造性を超えると主張した。

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「一人の天才よりチームの方が創造性は高い」と、わたしが信じる理由(村瀬俊朗)

「一人の天才よりチームの方が創造性は高い」と、わたしが信じる理由(村瀬俊朗)

ここに、多様な経験や知識を持ったメンバーがいる。だれもが、人々を熱狂させる商品・サービスを生むために懸命に取り組んでいる。しかし、出てくるのは凡庸なアイデアばかり。メンバー一人ひとりの専門性や見識が活かされない。――やはり、創造性とは「孤高の天才」に宿るのか。チームで新しい発想を生みだすことはできないのか? 10年以上にわたりチームワークのメカニズムを研究してきた気鋭の経営学者が「チームの創造性」

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