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連載「映画で貧困は救えるか」

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途上国の子どもたち向けに移動映画館を展開する著者。カンボジアをはじめとした世界各国5万人以上に映画を届けてきた実績とは裏腹に、活動の存在意義を自問自答する日々。食糧やワクチンを届… もっと読む
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#移動映画館

【最終回】映画で貧困は救えるか(教来石小織)

【最終回】映画で貧困は救えるか(教来石小織)

途上国で移動映画館を展開するWorld Theater Projectの教来石さん。これまで「映画で貧困は救えるか」をテーマに連載を書かれてきました。今回がついに最終回。「映画で貧困は救えるか」という問いに対し、教来石さんが出した答えとは――?

「映画がなければ自殺してたと思います」
映画で貧困は救えるか――

この連載終了までに自分なりの答えを出さねばとあがき、ある日「貧困」をテーマにしたイベ

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「生まれ育った環境」とは何か。——ネパールで考えた問いと、移動映画館の新しい可能性。(教来石小織)

「生まれ育った環境」とは何か。——ネパールで考えた問いと、移動映画館の新しい可能性。(教来石小織)

途上国で移動映画館を展開するWorld Theater Projectの教来石さん。ネパールの二つの孤児院、社会的に抑圧された「ダリット」の人々が住む村、そしてネパールの映画配達人が届けていたもの...ネパールでの数々の出会いから教来石さんが抱いた問いと、そこから見えた移動映画館の新しい可能性に迫ります。

「途上国で移動映画館」の活動を始めてからの忙しさは、派遣事務員の仕事しかしたことがなかった

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「ネパールで生まれた僕は夢を持てない」(教来石小織)

「ネパールで生まれた僕は夢を持てない」(教来石小織)

途上国で移動映画館を展開するWorld Theater Projectの教来石さん。2019年3月、あるきっかけからネパールへと飛び立ちました。

「生まれ育った環境に関係なく、子どもたちが夢を持ち人生を切り拓ける世界をつくる」、そんなミッションを掲げてきた活動ですが、ネパールで直面したのは「生まれ育った環境がいかに大きいか」という厳しい現実でした。

ある面影を求めて——私がネパールに飛んだ理由

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行動を止めない、思考も止めない、迷いとともに:「『迷い』と向き合い続ける力」イベントレポート(小林祐子)

行動を止めない、思考も止めない、迷いとともに:「『迷い』と向き合い続ける力」イベントレポート(小林祐子)

「迷い」という言葉を聞くと、多くの人はネガティブな印象を抱くのではないでしょうか? だけど実は、「迷い」を安易に捨てて手近な「正解」に飛びつくのではなく、「迷いと向き合い続けること」に備わる力もあるのではないか。

そんなテーマを掲げ、迷いや葛藤と向き合う機会が多いであろう途上国や被災地で活動する二人の登壇者をお招きしてトークイベントを開催、そこに参加した小林祐子さん(英治出版オンライン 編集パー

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オフ日記「いつでも歩けば映画に当たる」(教来石小織)

オフ日記「いつでも歩けば映画に当たる」(教来石小織)

カンボジアをはじめとする途上国で移動映画館を展開する、World Theater Project代表の教来石さん。活動から離れた日常のなかでも、彼女のまわりにはいつも「映画」の存在が。
今回は、いつもと違うオフモードの日記テイスト。そのなかにも顔を出す映画の匂いと、教来石さんの感性を存分にお楽しみください。日記のなかには、教来石さんの次なる行動の影も…

3月某日 雨英治出版オンラインの記事がご縁

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映画で少数民族が抱える課題に挑む――代表の私には見えなかった新しい活動の可能性(教来石小織)

映画で少数民族が抱える課題に挑む――代表の私には見えなかった新しい活動の可能性(教来石小織)

途上国で移動映画館を展開するWorld Theater Projectの教来石さん。しかし、様々な事情でなかなか頻繁には現地に行けないコンプレックスが。
それにもかかわらず、活動地域は広がり続け、さらには当初想定していなかった映画の新しい可能性も見え始め――。

代表なのに現地に行けないコンプレックスおそらく会話のきっかけを探してくださってのことだろう。会う人会う人、「カンボジアにはどのくらい行か

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【3つの動画で知る!】途上国で移動映画館を行うWorld Theater Projectの活動

【3つの動画で知る!】途上国で移動映画館を行うWorld Theater Projectの活動

カンボジアをはじめとする途上国で移動映画館を展開するWorld Theater Project。独特な活動のなかで感じる葛藤や可能性を創設者である教来石小織さんが綴ってきた本連載ですが、今回は編集部より、実際の活動内容や現地の様子がよくわかる3つの「動画」をまとめてお届けします。動画はすべてWorld Theater Projectが作成したものです。

『Movies Inspire Dream

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西日本豪雨に思う――NPO代表の私が無力を感じる瞬間と、支えにしている言葉。(教来石小織)

西日本豪雨に思う――NPO代表の私が無力を感じる瞬間と、支えにしている言葉。(教来石小織)

世界をよりよい場所に変えるミッションを掲げて邁進するNPO。その創設者・代表であっても、活動の意義に迷い、自信を失うことも。
カンボジアをはじめとする途上国で移動映画館を展開するWorld Theater Project代表の教来石さんは、どんなときに、どんな迷いを抱くのでしょうか? そして、教来石さんがそれでも進み続けるために支えにしている言葉とは?

活動に自信がなくなるときこの世で一番美しい

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挑戦をやめたらそこで試合終了ですよ。(教来石小織)

挑戦をやめたらそこで試合終了ですよ。(教来石小織)

去年10月から始まった連載「映画で貧困は救えるか――『途上国×移動映画館』で感じた葛藤と可能性」。著者が活動のなかで感じる葛藤が真摯に綴られてきましたが、新年初となるこの記事では少し方向転換。ここまでの連載執筆を振り返りつつ、2019年はどんな挑戦をするのかを語ってもらいました。
これまでの記事にはなかった教来石さんの実際の雰囲気と、衝撃のラストをお楽しみください。

――明けましておめでとうござ

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スマホとYouTubeが普及しても、移動映画館を続ける理由(教来石小織)

スマホとYouTubeが普及しても、移動映画館を続ける理由(教来石小織)

映画を発明したと言われている人物は二組います。アメリカのエジソンと、フランスのリュミエール兄弟。前者が発明したキネトスコープは、覗き穴から一人で映画を観るタイプ。後者が発明したシネマトグラフは、映像をスクリーンに投影することによってみんなで映画を観るタイプ。
リュミエール兄弟は、「映画を発明したのではなく、映画を観る大衆を発明した」と言われています。人々をひとつの場所に集める――映画が持つこの力に

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映画からもらった夢に乗って、いま私は生きている(教来石小織)

映画からもらった夢に乗って、いま私は生きている(教来石小織)

6年間にわたり途上国の子どもたち向けに移動映画館を展開してきた著者。活動のなかで感じる葛藤や可能性と向き合っていく本連載ですが、そもそもなぜこの活動は始まったのでしょうか? 映画の力を信じる原点には、著者自身が映画に救われた体験がありました。
連載:映画で貧困は救えるか――「途上国×移動映画館」で感じた葛藤と可能性

心の貧困を知っている。

心がどんどん貧しくなるのはどんなときかということも。そ

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映画は世界を戦争から救えるか?(教来石小織)

映画は世界を戦争から救えるか?(教来石小織)

カンボジアの農村地域を回る移動映画館を延べ500か所以上で展開してきた著者。2年前、内戦時代の記憶を引きずるある村で上映したのは、当時の様子を描いた映画でした。

その日の上映会で、村人にある変化が――

貧困を引き起こす大きな要因でもある戦争に対する、著者が感じた「映画の力」とは?

連載:映画で貧困は救えるか――「途上国×移動映画館」で感じた葛藤と可能性

日本が誇る巨匠・黒澤明監督は、生前こ

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夢だった活動が広がることで、新たに生まれる不安(教来石小織)

夢だった活動が広がることで、新たに生まれる不安(教来石小織)

途上国の子どもたち向けに移動映画館を展開する著者。カンボジアをはじめとした世界各国5万人以上に映画を届けてきた実績とは裏腹に、活動の存在意義を自問自答する日々。食糧やワクチンを届けるべきではないのか? 映画を届けたいのは自分のエゴではないのか? 映画は世界を変えられるのか? 本連載では、「映画で貧困は救えるか」をひとつの象徴的な問いとして、類を見ない活動をするNPO経営のなかで感じる様々な葛藤や可

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著者紹介:教来石小織

著者紹介:教来石小織

きょうらいせき・さおり
NPO法人 World Theater Project代表。日本大学芸術学部映画学科卒業。
2012年より途上国の子どもたちへの移動映画館活動を開始。カンボジアをはじめとした世界各国5万人以上の子どもたちに映画を届けてきた。俳優・斎藤工氏の呼びかけで製作した世界中どこででも上映できる権利フリーのクレイアニメ『映画の妖精 フィルとムー』(監督:秦俊子)は、世界各国の映画祭で高

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