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あなたのアイデアの解像度を診断しよう──『解像度を上げる』本文一部公開

「解像度が高い」人は、どう情報を集め、なにを思考し、いかに行動しているのか。その視点と方法を解き明かした『解像度を上げる──曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法 』(馬田隆明著、2022年11月発行)。解像度を上げるには、まず今の解像度を把握することが大切です。今回は「第2章 あなたの今の解像度を診断しよう」の一部を公開します。

新聞やテレビ、インターネットなどで流れてくるニュースや記事などを見て、疑問が湧くことはあるでしょうか。

もし「へえ、そうなんだ」と疑問を持たずに受け取っているとしたら、その領域についての解像度はまだ十分高くないのかもしれません。解像度が高い状態であれば、一つのニュースを見るだけで、「たしかにそのような面もあるけれど、もっと別の面からはこういう意見もあるよね」と他の角度からの見方を知っていたり、「ここは検討できていないんじゃないか」「ここは意図して省いたのかな?」といった、言及されていない部分まで想像したりできるはずです。

分からないところが分からない、つまり、疑問がない、質問ができないのは、解像度が低いときの典型的な症状です。学校で先生に質問を求められたときに、「何を聞けばいいのか分からない」という状況を経験したことがある人は多いのではないでしょうか。物事をある程度深く理解できていないと、疑問は持てないものです。逆に、研究者のように特定の分野を突き詰めた人ほど、「分からないこと」や「まだ分かっていないこと」を多く言える傾向にあります。

研究者が論文を書くときには、まず「分かっているところ」を調査で明確にすることで、「まだ分かっていないところ」を把握します。つまり、まずは「分からないこと」をはっきりと言える状態にするのです。

そのうえで、複数ある「分からないこと」の中でも、相対的にとても重要な部分を特定し、それを解決する意義を説明したうえで、解決策となりうる仮説を立てて検証することで、「まだ分かっていないところ」の謎を解き明かしていくというのが、研究者に求められる解像度の高さです。

ビジネスでも同様です。多くの知的生産者は、ビジネスの最前線で起こっている現象を研究し続けて、そこから課題と解決策を考え続ける研究者とも言えます。たとえば売上のデータなどから、新規の顧客が減っていることが分かっているのであれば、なぜ減ってしまったのか、どういったタイミングで顕著に減ったのかなど、分からないところを挙げてみて、それぞれの原因を調査して解き明かしていきましょう。

優れた起業家からは「過去の自分はまるで分かっていなかった」という言葉をたびたび聞きます。その意味を裏返せば、「これまで分かっていなかったことを、その都度努力して解明し、新たに分かり続けている」ということです。まずは分からないことを把握するところから始めましょう。

ここからは、あなたの具体的な事業アイデアや、顧客に自社の製品を提案するときの話し方、自社内の業務を改善するための施策などに関する解像度を診断します。
そのアイデアや提案について、この文章を埋められるでしょうか[1]。文章を埋めたら、1章で挙げた4つの視点で解像度をチェックしていきます。

(注)ウェブ掲載にあたり、可読性向上のため、改行を加えています。

文章は埋められましたか? 
本のなかでは、以下の「解像度を上げるための4つの視点」であなたの解像度をチェック、解像度を上げるにはどの視点を強化し、実際にどんなふうに情報を集め、思考し、行動すればいいのか、紹介しています。
ぜひ実際に診断をして、今取り組んでいるプロジェクトや業務の解像度を上げてみてください。

●簡潔に話せるか、ユニークな洞察があるか ──「構造」をチェックする
●多面的に話せるか ──「広さ」をチェックする 
●その話はどこまで具体的か ──「深さ」をチェックする 
●道筋は見えているか ──「時間」をチェックする

また、「言語化」することも、解像度を上げるコツの一つです。
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[著者]
馬田隆明(うまだ・たかあき)
東京大学 FoundX ディレクター。
University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スタートアップ向けのスライド、ブログなどで情報提供を行っている。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』『来を実装する』。

〈注〉
[1] Jonathan Rasmusson『アジャイルサムライ―達人開発者への道』(西村直人、 角谷信太郎監訳、近藤修平、角掛拓未訳、オーム社、2011)や東
京工業大学 エンジニアリングデザインプロジェクト(https://edparchive.esd.titech.ac.jp/toolkit/) を参考にしました。
穴埋めはJonathan Rasmusson氏によるインセプションデッキのエレベーターピッチの構成とその日本語版 (https://github.com/agile-samurai-ja/support/tree/master/blank-inception-deck) を主に参考にしています。本穴埋めのライセンスはCreative Commons 表示(バージョン不明)です。