あなたのアイデアの解像度を診断しよう──『解像度を上げる』本文一部公開
新聞やテレビ、インターネットなどで流れてくるニュースや記事などを見て、疑問が湧くことはあるでしょうか。
もし「へえ、そうなんだ」と疑問を持たずに受け取っているとしたら、その領域についての解像度はまだ十分高くないのかもしれません。解像度が高い状態であれば、一つのニュースを見るだけで、「たしかにそのような面もあるけれど、もっと別の面からはこういう意見もあるよね」と他の角度からの見方を知っていたり、「ここは検討できていないんじゃないか」「ここは意図して省いたのかな?」といった、言及されていない部分まで想像したりできるはずです。
分からないところが分からない、つまり、疑問がない、質問ができないのは、解像度が低いときの典型的な症状です。学校で先生に質問を求められたときに、「何を聞けばいいのか分からない」という状況を経験したことがある人は多いのではないでしょうか。物事をある程度深く理解できていないと、疑問は持てないものです。逆に、研究者のように特定の分野を突き詰めた人ほど、「分からないこと」や「まだ分かっていないこと」を多く言える傾向にあります。
研究者が論文を書くときには、まず「分かっているところ」を調査で明確にすることで、「まだ分かっていないところ」を把握します。つまり、まずは「分からないこと」をはっきりと言える状態にするのです。
そのうえで、複数ある「分からないこと」の中でも、相対的にとても重要な部分を特定し、それを解決する意義を説明したうえで、解決策となりうる仮説を立てて検証することで、「まだ分かっていないところ」の謎を解き明かしていくというのが、研究者に求められる解像度の高さです。
ビジネスでも同様です。多くの知的生産者は、ビジネスの最前線で起こっている現象を研究し続けて、そこから課題と解決策を考え続ける研究者とも言えます。たとえば売上のデータなどから、新規の顧客が減っていることが分かっているのであれば、なぜ減ってしまったのか、どういったタイミングで顕著に減ったのかなど、分からないところを挙げてみて、それぞれの原因を調査して解き明かしていきましょう。
優れた起業家からは「過去の自分はまるで分かっていなかった」という言葉をたびたび聞きます。その意味を裏返せば、「これまで分かっていなかったことを、その都度努力して解明し、新たに分かり続けている」ということです。まずは分からないことを把握するところから始めましょう。
ここからは、あなたの具体的な事業アイデアや、顧客に自社の製品を提案するときの話し方、自社内の業務を改善するための施策などに関する解像度を診断します。
そのアイデアや提案について、この文章を埋められるでしょうか[1]。文章を埋めたら、1章で挙げた4つの視点で解像度をチェックしていきます。
(注)ウェブ掲載にあたり、可読性向上のため、改行を加えています。
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