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はじめの一歩は自分で踏もう

新しいことをゼロから始めるとき、本当に大切なことは何か。まったくの未経験から石鹸屋を始めた著者が、創業初期の試行錯誤を語る。

石鹸を作る! どんな?

石鹸屋を始めようと思ったのが2014年4月。前回の記事で書いたように、三陸で石鹸を作る意義や市場性については思い巡らせていましたが、「どんな石鹸を作るか」はまだ全く考えていませんでした。一度も一人で作ったことはなく、ましてや当時はまだ工房も無い。「やると決めたものの、どんな石鹸を作ろうか」

当時、自分の中である種の開き直りと自覚がありました。「俺は素人だ! いきなりいいものなんて、作れるわけがない!」と。また同時に、「マッハで失敗を積み重ねれば、最短で玄人に近づける」とも考えていました。毎日毎日、石鹸のことだけを考えて手を動かしている日本人は、そう多くないだろうと。

そう! 何を作るかは、何が作れるかを知ってから考えればいい。経験もない時点での着想なんて、たかが知れている。そんな開き直りです。

では、いかにマッハで失敗を積み重ねるか。それは、試作100回。名付けて、「石鹸リーン・スタートアップ」。

基礎となるオイルの配合を変える。型の大きさを変える。形を変える。なかに入れる素材を変える。アクセントとなるアロマオイルの配合を変える。とにかく思いつく限り、試作と検証を繰り返していく。

すると色々な問題がでてきます。固まらない、思ったように色が出ない、うまく柄が出せない、思った香りにならない、などなど。特に、まったく同じ配合のはずなのに仕上がりが違った時は、もう頭の中がはてなだらけ。そして「製作時の気温の違い」が原因だとわかり、大発見をしたような気分に。

やがて課題の次元が上がってきました。「どうやって作るか」はわかって来た。さて、どんなものを作ろうか?

思わぬ大反響!

どんな石鹸を作ったら良いか? 答えのない問いを抱えながら試作を続けていた頃、工房立ち上げの際にお世話になったボランティアの方々に、お礼として小さく切った石鹸を箱に入れて贈ったことがありました。一辺25ミリ、正六面体のキューブ型。指でつまめるほどの大きさの石鹸を3個箱に詰めて。それは、石鹸作りを習っていた教室で見せてもらった箱入りの石鹸をヒントに自分たちで作ったものでした。

その石鹸がボランティアの方々に届くとすぐに、「かわいい」「良いものですね」という声が。さらには、「売って欲しい」という要望も! はたまた、「イベントのお土産にしたい」「結婚式の引き出物に使いたい」という想像を超えた反響が!

「箱に入れるのはアリなんだな」「キューブ型、けっこうかわいがられるかも」「自分使いではなく、プレゼントとして有望かも」。こうして、製品のコンセプトが固まりました。

そして、石鹸屋を始めると決意してから1年後の2015年夏、ついにKURIYAの石鹸が発売開始となりました。一辺25ミリ、キューブ型の石鹸。インテリアやお土産、結婚式の引き出物として使っていただいています。

紆余曲折の果てに、最初の製品が誕生しました。新しいことをゼロから始める時に何が大切か。ごくごく基本的なことですが、「一生懸命にやること」、そして「すなおに聞くこと」。これに尽きると僕は思います。

いきなりだれかに頼ろうとせず、はじめの一歩は自分で踏み、失敗をおそれずに一生懸命にやる。それができて初めて、人に会いに行ける。頼れるようになる。そして会いに行ったときは、その人の声にすなおに耳を傾ける、そして思いっきり頼る。

そんな僕がふだんから思いっきり頼らせていただき、これまで何度もお会いして場の作り方、人のつながりなどについてお話を伺ってきた、僕にとって師匠であるクルミドコーヒーの影山知明さんをゲストにお迎えし、「人の幸せ、組織の幸せ 」というテーマで対談します。

——5/22(火)トークイベントのお知らせ——
人の幸せ、組織の幸せ
影山知明(クルミドコーヒー)×厨勝義(三陸石鹸工房KURIYA)
  

個人の幸せや成功と、組織としての幸せや成功をどう両立させ、どうやって相乗効果を生み出すか。これは今の自分にとって最大の課題であり、これから事業を進めるうえでとても重要なテーマだと考えています。今回までの記事を読んでくださった方にとって、ご自身の課題意識を共有したり、学びを深める時間にできればと思っています。当日、みなさんとお話しできることを楽しみにしています!

厨勝義(くりや・かつよし)三陸石鹸工房KURIYA代表、株式会社アイローカル代表取締役。1978年久留米市出身。工作機械メーカー、国際教育NPO(アメリカ)、DREAM GATEプロジェクトを経て翻訳事業会社を経営。東日本大震災後に宮城に移住し、南三陸町戸倉地区を拠点に復興支援活動を開始。起業家創出・育成支援、民間企業の力を活用した震災復興事業の企画などに注力した後、2014年に株式会社アイローカル設立。2015年に南三陸石けん工房(現・三陸石鹸工房KURIYA)をオープン。女川町女川浜在住。
ありがとうございます!著者登壇イベントへのご参加もお待ちしてます。
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英治出版オンライン

英治出版オンラインとは、連載コンテンツや著者イベントを通じて、共感と学びの場をともにつくるプロジェクトです。よりよい未来をつくる活動が前進するアイデアやストーリーを定期配信。連載著者イベントも開催しています。 運営:英治出版 http://www.eijipress.co.jp/

厨勝義「三陸せっけん物語」

震災をきっかけにこれまで無縁だった東北に移住し、まったくの未経験から三陸石鹸工房KURIYAを立ち上げた著者による、「せっけんで、世界をせっけんする」挑戦記。
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