ともに歩んできた人たちは、『想いはこうして紡がれる』をどう読んだのか──読書会レポート
「吉田さんも、自分と同じだったんだ」──初めて明かされた素顔を知って
読書会の参加者は、何度もいわきに足を運び、コットンの種まきや収穫に参加した方、関東で出展(店)する際に販売を手伝っていた方、いわきにゆかりがある方、さらには大学時代のご同窓の方など、職業や世代もさまざま。この場で「はじめまして」という方も多い会でしたが、それでも全員、吉田さんが手掛けていたザ・ピープルやふくしまオーガニックコットンプロジェクトでつながっている、そんな15名が本を手に集まりました。
それぞれ思い出を交えつつ感想を語り合うなか、多くの方から「衝撃だった」「そんなふうに思っていたなんて」との言葉が出たのが、吉田さんの内面を描いた記述。なかでも、組織の混乱と自身の病について率直に書かれた第4章、そして、「ひとりの市民」としての自身の生い立ちを明かした第5章に話題が集中しました。
みなさんの中で、吉田さんといえば、「前向き」「エネルギッシュ」「巻き込み上手」で、やりたいことに向けて猪突猛進。計画性はないけど、「なぜか最後はうまくいく」パワフルな人、という印象だったといいます。
しかし、本を読んだ参加者から口々に出たのは、
「吉田さんも自分と同じような疎外感を抱えていたんだ、と知った」
「結婚後に『嫁』『母』となり、自分が自分でなくなる感覚を、吉田さんも抱えていたんですね」
といった、これまで知らなかった吉田さんの側面に驚き、そして共感した言葉でした。
そう、吉田さんも、悩みや迷いを抱えながら一歩ずつ進んできたひとりの市民。事業が終わってしまったり、病が発覚してからは我が子のように思っていたザ・ピープルからも退いたりと、必ずしも順風満帆とはいえないなかで、それでも前を向いて、明るく笑顔で振る舞っていた──そんな気づきがシェアされ、全員が改めて吉田さんに想いを馳せたのでした。
どんな「私」も、それを積み重ねることで市民活動は前進する
本書では、各章末、そして「おわりに 後からやってくるあなたへ」で、未来の世代へのメッセージが綴られています。
なかでも第5章のメッセージ「たくさんの『私』の積み重ねこそが、変容の礎に」からは、等身大の吉田さんの顔が思い浮かぶとの感想も。
同じ場所を読んだ方からは、まだ何者でもなかった吉田さんの中に、「ザ・ピープルにつながる芽があったんだ。そしてそれが、ザ・ピープルで開花したんだ」とも。
自分の中の違和感、モヤモヤに向き合い、悩みながらも強く前向きに歩みを進められた吉田さんの「原動力」に触れることができました。
「未来の世代」に想いを託して
長くともに歩んできた人もはじめて知ったという悩みや挫折。そして活動を始める前の吉田さんの姿。
そうした「積み重ね」が丁寧に描かれたからこそ、吉田さんの振る舞いに込められていた「強さ」もまた、際立っていたのだと思います。
参加者のひとりから、挫折も包み隠さずに述べられた第4章が、
という言葉で締めくくられていたことに、「自分がいなくなるとわかっていて、次のリーダーが出てくると信じている。そのことに涙が止まらなかった」との感想が寄せられました。
残り少ない時間をどう使うか。
吉田さんは、未来の世代のために使う、と決めたのでしょう。
書籍の制作と並行して進められていたクラウドファンディングも、「この先、ザ・ピープルとふくしまオーガニックコットンプロジェクトを担う人たちが仕事をしやすいように、いい環境を残して、継承すること」が目的に掲げられていました。
そして今回の読書会も、チェックアウトで多くの方が語ってくれたのは、
「今後、自分に何ができるか、考えていきたい」
という言葉でした。
吉田さんが育んだ「想い」が、確実に未来につながり、「これから」が紡がれていく。その手応えを感じることができた読書会となりました。