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「学習する組織×セルフマネジメント」社内体験会参加者インタビュー(英治出版・平野貴裕)

日常生活やチーム、組織で起きる課題は、どれも複雑に絡み合った「システム的」なものばかりです。システム思考を基軸とする『学習する組織』は、自己・組織を変革する方法を提供し、英治出版のロングセラーとして多くの方々に支持されています。一方で、本や講演で知ったことを実践できない、という課題を持つ人は少なくありません。

そこで私たちは、「本と実践をいかにつなげるか?」「どうすればこの場に集った人たちの同僚や家族にもポジティブな変化をもたらせるか?」「新しいことを継続するには何が大切か?」こうした問いに答えるべく、「学習する組織×セルフマネジメント」を企画しました。

本記事は、「学習する組織×セルフマネジメント」プログラム開発の一環で実施した社内体験会参加者へのインタビューです。プログラム参加を検討されている方の参考になれば幸いです。

話し手:平野貴裕(英治出版プロデューサー、『insight』『恐れのない組織』などの編集担当)
聞き手:田中三枝(英治出版プロデューサー、「学習する組織×セルフマネジメント」企画)

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「心理的安全性がある」ってこういうことかもしれない


田中
:平野さん、社内体験会に参加していただき、ありがとうございました。同僚の私からすると、いつも冷静沈着な平野さんが、この体験会ではかなり前のめりで、ファシリテーターの福谷さんや稲墻さん、他の参加メンバーに色んな「問いかけ」や「突っ込み」を連発されていた姿がかなり印象的でした。

平野さんをそうさせたものは何だったのでしょう。そのときの心境を詳しく教えていただけますか?

平野:率直に言って、とても楽しかったんです。本当に。

特に印象に残っているのが、小さい子どもが食べ散らかしているという状況の写真を見て何を感じるか、という対話の時間です。ほかの参加者の反応と、自分の反応が全然違う、というのがあって。

田中:この写真ですよね。

平野:そうそう、これです。この写真を見て瞬時に「汚れてて嫌だな」「どうにかしないと、掃除しないと」みたいな感覚が自分の中にあった。でも、そうじゃない感じ方をした人がいて、けっこう衝撃だったんです。そのときに「同じものを目の前にしても、人によって捉え方が違うって、こういうことなんだ!」と腹落ちしたんです。

田中:あのときの平野さんの様子は尋常じゃなかったですね(笑)。

平野:それとですね、「汚れてて嫌だな」と反応してしまった自分が嫌だったんです。

田中:嫌だった?

平野:そう、嫌だった。ある参加者は、あの写真を見て「微笑ましい」と反応していたんです。それを聞いた私は「微笑ましいなんてありえない」と思った。一方で、「微笑ましいと思えるようになりたい」とも思ったんです。

だから稲墻さんに聞いたんですよね。「写真のような汚い状況は許せない。嫌だ。でも、それを嫌だと言っている自分も嫌だ。許容できるようになりたい。僕はどうすればいんでしょうか?」と(笑)。

微笑ましいと思えるように自分を変えていかなければならないのか。それとも、嫌だと思う感覚を大切にしていかなければならないのか。それが気になって質問しました。

すると稲墻さんが、「平野さんは本当にそうなりたい(許容できるようになりたい)と思っていますか?」「本当にそれが理想だと思っていますか?」という感じのことを言ってくれたんです。

田中:それに対して平野さんはどう答えられたんですか?

平野:即答できませんでした。というのも、稲墻さんに問われるまで気づかなかったんですが、自分は本当にそうなりたいかをよく考えぬまま「許容できるようになりたい」と言っていたんです。「汚れてて嫌だな」と写真で感じたのと同じで、「許容できるようになりたい」と思ったのも、反射的なものだった。良い悪いの話ではなく、自分自身を知る、そんな体験でした。

もうちょっとこの話を続けてもいいですか?

田中:どうぞどうぞ、ぜひ聞かせてください。

平野:さっきの話の流れで、「いまの自分から理想の自分になるために、何かを乗り越えなければならないんだ」というようなことを私が言ったんです。すると別の参加メンバーからこんなことを言われました。「その『乗り越える』っていう言葉に、なにかしら『囚われ』があるんじゃないんですか?」と。

それに対して私は「ああ、なるほどー」と思いつつ、少し抵抗感があったんです。

田中:抵抗感?

平野:私自身が「何かを乗り越えていく」ことを今まで繰り返してきて、そういうマインドセットなんだと思うんですよ。それを「そうじゃないんじゃない?」と言われた気がして、「なんでそんなこと言うねん!」って思った(笑)。

ただ「抵抗感」はあったんですけど、一方で嬉しかったんです。そういう風に「率直に」言ってもらえるんだ、って。『恐れのない組織』という本に出会って以来、「心理的安全性ってなんだろう?」とずっと考え続けてきたのですが、「心理的安全性があるって、こういうことなのかな」ってそのとき思えたんです。

「こんなこといったら馬鹿だと思われるんじゃないか」みたいな恐れがほぼなくて、素朴に感じたこと、疑問に思ったこと、知りたいなと思ったことを言葉にしてもいいんだ、という感覚がありました。

田中:自分の中の常識を外れるような意見であっても、自然に言い合える雰囲気があったなあと私も感じます。「学習する組織」では、リレーショナルスペース(学習が起こり得る場)という考え方があるのですが、平野さんの率直な問いかけが、わたしたちに学習をもたらしたのかもしれませんね。

「私たちは言葉にできる以上のことを学んでいる」


平野
:もう一つ、印象に残っていること、いいですか?

田中:もちろん。ぜひぜひ!(前のめり!)

平野:「学習とは、言葉にできること」だと私は思っていたんです。何かを学んだというのはつまり、言語化ができるということだと。その考えを福谷さんに伝えたら、「いやいや、私たちは言葉にできる以上のことを学んでいるんですよ」と言われたんです。それは、かなり響きました。おー、確かにそうだよなって。

田中:何だろう、固定観念みたいな…。

平野:はい、固定観念ですよね。でも、そこで私の「学習」に対する考えがガラッと変わったかいうとそうでもなくて、「いや言語化が重要でしょ」と思っている自分もいるんです。ただ、「言語化できること以上のことを私たちは学んでいるんです」という福谷さんの言葉は、心にすっと入ってきたんですよね。

平野:「ビジョニング」というワークも、固定観念が揺さぶられる体験でした。目を閉じてなんかやるみたいなワーク、正直言うと苦手なんです(笑)。見えてきたものに身を委ねてみましょう、とか言われたりすると、ほんまかいな?と。

「合理的であるかないか」というのが自分にとって重要なんです。でも、「言語化できる以上のことを私たちが学んでいるんだ」という福谷さんの言葉があったから、その「ビジョニング」も、もしかすると何かあるのかもしれないと思ったんです。懐疑的になる自分を一旦止めて、身を委ねてみようと。

すると、映像がありありと見えたんですよ!

田中:え、映像が?

平野:はい。それで、その後のグループワークのとき、ほかの人に聞いてみたんです。「こういうの私はあんまり好きじゃなくて、斜に構えてしまうんですけど、実際にやってみたら、なんか映像が見えたんです。これってどうしたらいいんですかね」と話をしたら、とりあえず乗っかってみればいいんじゃない、みたいなこと言われて。

その投げかけがあったおかげで、自分が見たものが自分にとって大切なことなのかもしれないと感じながら、頭の片隅か心の片隅に置いて生きてもいいのかなと思えたんです。

田中:余白というか許容範囲が、ちょっと広がったのかもしれないですね。

平野:そう、そうですね。とりあえず理解できないことであったとしても、受け止めてみるっていうだけの「あそび」ができたのかもしれないですね。

自分の固定観念に気づくレア体験


田中
:体験会の前後で、何か変化はありましたか? 感情とか行動とか。もし思いつくことがあったら教えてください。

平野:「対話は大事である」とか、「意見は多様であることが重要である」とか、頭ではわかっていたのですが、思っていた以上に、私は自分の考えを強固に信じていて、それが正しいと思っているんだなと気づきました。

例えば、ビジョニングは怪しいものだ、という「抵抗感」が生まれてしまうと、その感情を強化してしまう自分がいるんだなと。これは絶対おかしいだろう、とか。ただ、それをちょっと手放すことができるようになったかもしれない、という気はします。

自分の考えは、ひとつの「固定観念」なんだってカッコにいれてもいいかなと思えるようになった。そういう感じですかね(笑)。

田中:なるほど。それって結構大きな違いのような気がします。

平野:その気づきをあらゆる場面で実践できているかどうかはわかりませんが、あの体験会で一度経験できたことは大きな収穫だと思っています。

田中:ちょっと引いてみて、こういう自分もいるかもね、と思える。そういうゆとりが生まれてきたのかもしれないですね。

平野:そうですね。
あと一つお伝えしたいと思っていたことがありました。「組織」という概念が最近よくわからないんです。

例えば、私と田中さん、私と福谷さん、稲墻さんとか、そういう一対一の関係が豊かになるのは大切だとは思うんですが、それが「組織」という単位で見るのが一体何なのか、あんまりよくわかっていなくて。 

『恐れのない組織』の中で、解説の村瀬さんや著者のエイミーさんが、「信頼と心理的安全性は違う」と書かれていて、それはすごく重要なメッセージだと感じるものの、あまりそれを理解できていなくて(笑)。

一対一の関係を大切にしていくのが「信頼」。でも組織には一対一の関係とは違う力学が働いているから、あえて「心理的安全性」という言葉を使っていると思うんです。でも、その違いがまだそんなによくわかっていなくて。

「学習する組織×セルフマネジメント」は、信頼と心理的安全性をどうつなぐか、個人と組織をどうつなぐか、という問いに対する答えがあるんじゃないかと期待しています。学習する組織とセルフマネジメントをかけ合わせている価値は、そういうところにあるんじゃないかと。

田中:それは私個人もぜひ探求してしたいテーマです。「学習する組織×セルフマネジメント」にヒントがありそうですね。

最後に、現在募集している「学習する組織×セルフマネジメント」の参加を検討している皆さんにメッセージをお願いできますでしょうか?

平野:私は研修やワークショップにこれまでたくさん参加してきたわけではありませんが、少なくとも、私が参加したワークショップの中では一番おもしろかったです。身内びいきではなく、本当に。

自分の固定観念に気づけた、かなりレアな機会だったなと思っています。なので、研修とかワークショップで何が変わるの?と思われている方にはぜひ参加していただきたいですね。

田中:そういう変化を自分も感じてみたい、と思う方にぜひ参加していただきたいです。平野さん、今日はありがとうございました!

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