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ほしい未来をみんなで創る――『コミュニティ・オーガナイジング』第1章を公開します

人々のパワーを集めて政治・地域・組織を変える、草の根変革メソッドの入門書『コミュニティ・オーガナイジング──ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』(鎌田華乃子著)。本書のパート1(1〜6章)では、小学生カナメを主人公とするストーリーを通してコミュニティ・オーガナイジングの手法を紹介しています。

ここを読めば、コミュニティ・オーガナイジングの基本的な活動のイメージがわき、自分にとって身近な課題にどう活かせるかも考えやすくなるのではと思います。そこで以下では、パート1の導入部と第1章「コミュニティ・オーガナイジングとは何か」を公開します。(掲載にあたり見出しや表記を一部変更しています

ほしい未来をみんなで創る5つのステップ

「出る杭は打たれるなんて恐れずに、自ら行動してみましょう」

と言われても、すぐできる人なんてそうそういないでしょう。

まず、やり方がわかりません。たとえば「読み書き」を私たちは、漢字を覚えて、文章を読んだり、作文を書いたりして習得してきました。つまり「知識を学んで、練習して、実際に使ってみる」というプロセスを経て習得するのです。社会的なアクションを起こすことも同じです。行動するための知識を学び、練習して、実践する。ただ、日本の学校教育では、行動の仕方を意図的に教えることはしていないでしょう。それに、大人たちが社会的な活動に関わっていれば子どももそれを当然やることと捉えるようになりますが、大人たちが「問題があっても行動しない」選択をしていたら、それを見て育つ子どもたちも「行動しない」ようになるでしょう。私たちには、社会的アクションの方法論や、それを学ぶ機会が不足しているのです。

そこで役に立つのが、コミュニティ・オーガナイジングだと私は考えています。

コミュニティ・オーガナイジングとは、人々が力を合わせて大きな力を生み出し、社会課題を解決することであり、その方法論です。日本でも序章でお話ししたとおり中世の一揆、戦後の公害運動、地域活動などさまざまな社会運動が行われてきましたが、それを理論化して意図的に学べるようにしたものがコミュニティ・オーガナイジングです。アメリカをはじめさまざまな国、団体や大学で教えられており、私が関わるNPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンではハーバード・ケネディスクールのマーシャル・ガンツ博士のまとめた方法論をもとに教えています。社会学、心理学などの理論を元に、誰でも学べ、教えられるように体系化したものです。

コミュニティ・オーガナイジングは、大きく5つのステップに整理できます。

1.共に行動を起こすためのストーリーを語るパブリック・ナラティブ
2.活動の基礎となる人との強い関係を作る関係構築
3.みんなの力が発揮できるようにするチーム構築
4.人々の持つものを創造的に生かして変化を起こす戦略作り
5.たくさんの人と行動し、効果を測定するアクション

また、この5つの実践を支えるものとしてコーチングがあります。

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ここからコミュニティ・オーガナイジングについて、ステップごとに、実践がイメージできるようにストーリーを軸にお話ししていきます。扱うのは、小学校5年生の女の子、カナメが学校で直面した課題に対し、仲間とともにコミュニティ・オーガナイジングで挑む架空のストーリーです。

なぜ小学生を主人公としたストーリーを使うのか。一つの理由は、できるだけかみ砕いた言葉で、誰もがイメージできる題材で語りたいからです。コミュニティ・オーガナイジングはアメリカで研究が進んでいるため、使う言葉もカタカナになりがちです。そのまま話しているとわかりにくいと言われることがあります。多くの人に知ってもらい、活動に参加してもらうために、なるべく普段使う言葉で語るべきだと考えています。

また、実際に日本の小学生も行動を起こしています。板橋区の小学校6年生の子どもたちは、廃校跡のグラウンドで毎日サッカーをしていました。しかしある日突然、工事のためにボール遊びを禁止されてしまったのです。他の公園も試したり、区内の公園を詳細に調べたりしましたが、フェンスにボールを当ててはだめとか、使用可能時間が16時30分までなどの決まりがあり、存分にサッカーができません。

「思いっきりサッカーがしたい」という思いに衝き動かされた子どもたちは、大人たちにヒントをもらいながら、区長への手紙を書いたり、陳情書を書いて区議会に提出するといった300日に渡る戦いを繰り広げました。その結果、ボール遊びができる場所を確保できるようになったのです。

そしてメキシコでは最近、民主的なシチズンシップ教育の一環で、公立の小学校から高校までの教育課程においてコミュニティ・オーガナイジングを年間を通じて、発達段階に応じて教えています。生徒が自分のことを知るところからはじめ、コミュニティのいくつもの問題を理解し、みなで話し合い一つの問題にしぼり、社会資源を探しあて、賛同者や反対者、関係者を特定し、戦略を立ててアクションしていく。メキシコの子どもたちは、カナメたちがみなさんにお見せする方法でコミュニティ・オーガナイジングを学び実践しています。

それでは、カナメと仲間たちの大冒険。はじまり、はじまり。

ある日、昼休みがなくなった

4月に5年生になったカナメ。新しいクラスに期待が膨らむ中、新しく着任した教頭先生が始業式でスピーチをしています。教頭先生はなかなか厳しそうな人。「なんだか怖そうな先生」とカナメは思いました。そのとき、子どもたちからどよめきが起きました。「みなさん、日頃から勉強を頑張っていると思いますが、もっとみなさんの成績は伸びるはず。だから、これから昼休みの時間を、全員が読書する時間にします」と教頭先生が宣言したのです。

カナメは動揺しました。昼休みは大好きな時間です。友達と絵を描いたり、鬼ごっこをしたり。給食が終わるとすぐに外に飛び出しドッジボールやサッカーをする子もいます。これからはその時間がなくなり、代わりに読書をしなければならないのです。

嫌だなあ、と思いながら家に帰る途中、近所に住む年上のユキさんに会いました。いつも元気で明るい女性でカナメはユキさんを慕っていました。カナメのお父さんのように会社で働いている人ではなく、社会を良くするための団体で、社会の問題を解決する方法を教えている人なのだ、とお母さんから聞いていました。

「カナメ、元気なさそうじゃん。どうしたの?」
アパートの前を掃除していたユキさんが手を止めて声をかけました。
「うん、明日からね、学校で昼休みがなくなっちゃうの」
カナメはうつむきながら応えます。
「え、なんで?」
「私たちの成績をもっと伸ばしたいから。本を読む時間を増やすと良くなるはずだって」
「昼休みって自由に遊べる時間のはずでしょ?」
「うん。そうなんだけど……。でも、教頭先生が決めたことだから」
「大人や先生が決めたことがいつも正しいとは限らないよ。カナメはどう思うの?」
「おかしいと思う。クラスのみんなも嫌がってたよ」
「そうだよね」。ユキさんは頷き、カナメの目を見て言いました。「カナメはどうしたいの?」
「え?」
「カナメはどうしたいの?」
「どうしたいって……教頭先生が決めたんだよ。従うしかないよ」
「普通はそう思うよね。でも、変えられる方法を私、知ってるよ」
「え? 変えられる方法?」
「そう。変えるのは大変だけど、方法はある。知りたかったらいつでもおいで」
「うん……」

カナメは家に帰ってから考えましたが、どんな方法なのか見当もつきません。それに、やっぱり教頭先生が決めたことには従うしかないよね、と思いました。

あなたがこの世で見たいと願う変化に、あなた自身がなりなさい

翌朝、学校に行くと、みんな昼休みが自由でなくなったことを話していました。「いつドッジボールするんだよ」「ゴムとびしたいのに」「本読むのは好きだけど、強制されたくないよね」「新しい教頭、最悪だ」「早く違う学校に行ってほしい」……

そして昼休み。担任の先生がたくさんの本を持ってきて、子どもたちに一冊ずつ配りました。カナメに回って来た本はガンジーの伝記でした。まわりを見渡すとクラスメイトの顔はみなどんよりしています。今まででいちばん静かな昼休みが始まりました。みんなの重たい気持ちが伝わってくる20分。いつももっと続いてほしいと思う昼休みが、こんなに早く終わってほしいと思う時間になるなんて。ふと横を見ると、タケルは下を向いて紙で作った小さいボールを机の下で蹴っています。いつも活発で優しいリンは気怠そうに窓の外を見ています。ああ、こんなみんなの姿は見たくない……と思ったときに、なんとなく読んでいた本の中の言葉が目に飛び込んできました。

「あなたがこの世で見たいと願う変化に、あなた自身がなりなさい」

昨日ユキさんに聞かれた質問を思い出しました。「カナメはどうしたいの?」

その日の帰り道、ばったり会った6年生で児童会長のユリに、「教頭先生に昼休みを自由にしてください、とお願いしたけど、全然話を聞いてくれなかった」と聞いて、さらに暗い気持ちになりました。カナメはしばらく公園で考えたあと、よしっと一声上げて、ユキさんの家に向かったのです。

「どうしたの?」
「やっぱり、みんなつらそうで、私もこのまま昼休みがなくなるの嫌だし、なんとかしたくなってきたの」
「おお、いいね! じゃあ作戦会議だ!」

困難を抱える人々が変化の源

「これからカナメは、コミュニティ・オーガナイザーになるんだよ」
とユキさんは言いました。
「何それ?」
「困難に直面している人たちをオーガナイズして、その人たちの持っているものを使って、パワーを作り出し、問題の解決を促す人のこと」
「オーガナイズって?」
「人をつなげて、まとまりを作っていくようなことだよ」

ユキさんは、なぜその活動を行う必要があるのかを説明しました。教頭先生は学校の中で地位が高いから、教頭先生が決めたことには従うしかない、と子どもたちは思っています。でも、多くの子どもたちがつながり、団結して行動したら、パワーが生まれます。教頭先生に負けないくらいのパワーを作り出すこともできるかもしれません。そうすれば、昼休みの時間の使い方を元通りに戻せるかもしれません。

「コミュニティ・オーガナイジングは、パワーの偏りを解消することを目指す取り組みなんだ。社会で起きる問題は、立場の弱い人に起こるのよ。たとえば、去年まで一緒のクラスだったミホ、今年から普通学級に参加できなくなったでしょ」
ミホは聴覚障害を持つ子です。5年生になってから普通学級でみかけていません。
「聴覚障害のある子がいると他の児童の授業に影響があると考えられていて、高学年からは普通学級に参加できない決まりになってるの。ミホは耳以外は何も問題がないのに、みんなと同じ内容を学べないんだよ。おかしくない?」
「おかしい!」
「立場の弱い人にはこういう問題が起きるの。それを変えるにはパワーが必要。最近ミホの両親は他に障害を持つ子の親たちをオーガナイズして学校に問題提起していて、もしかしたらミホや他の子たちも普通学級に来年から参加できるかもしれないんだ。カナメたちもパワーを作らないと、教頭先生はますます自由時間を勉強の時間に変えてしまうかもしれないよ。でもオーガナイズしてパワーを作ったら変えられるかもしれない」
もっと自由時間がなくなったら大変だとカナメは思いつつも、ミホの両親の行動を聞いて、変えられる希望も感じました。

「カナメの同志は誰?」
同志とは、同じ困難に直面する人々のことだとユキさんは言いました。
「クラスメイト。でも学校中の子が昼休みがなくなって困ってるから、全校児童かも」
「そのなかでも特に中心となって動きそうな人たちは誰だろう?」
「低学年の子たちはよく事情がわかってないみたい。高学年の子はみんな怒ってるよ」
「その中でカナメとつながりがあるのは誰?」
「同じ学年の子」
「そうしたら、同志は小学校の児童全員、中心となる同志が五年生だね。まずこの中心となる同志をオーガナイズすることに取り組んでみよう」

【コミュニティ・オーガナイジングにおける「同志」とは】
コミュニティ・オーガナイザーのすることは何か。それは人々が持つリーダーシップを見出し、活動に招き入れ、人々の能力を伸ばしていくことです。そしてコミュニティを形作り、コミュニティの持てるもの(資源)からパワーを作っていきます。顧客にサービスを提供するのでなく、消費者に商品を売るのでもありません。同志という「共通の関心事のために結束することができる人たち」をオーガナイズしていきます。

同志とは社会問題に直面している「当事者」、そして当事者と同じくらい想いを共にしている人々を指します。同志の持てるもの(資源)を使ってどのように変化を起こせるかを考えていくのです。当事者自らが変化を起こす力を見出し、それを最大限使うことで、コミュニティそのものの力を増すことを狙います。

問題を抱える当事者(そして同じ想いの人々)が変化を起こす主体者となることが大事なのです。

弱さが強さになるリーダーシップ

「でも、みんなをオーガナイズするって大変そう」とカナメは顔を曇らせました。「みんなと話さないといけないんでしょ? そんなことしたことがないし。教頭先生よりも偉い人とかに手紙を書いて、教頭先生を辞めさせればいいんじゃない?」
ユキさんは微笑んで言いました。
「いやいや、それだと子どもたちにパワーがつかないよ。また似たような先生が来て、嫌なことしてくるかもよ。それに教頭先生とその偉い人が仲良しかもしれないよ」
「そうか……でも一人で全校児童をオーガナイズなんてできないよ」
「それは誰でも無理! 成功した社会運動で、一人のリーダーが成し遂げたものなんてないよ。たくさんのリーダーが生まれて、そのリーダーたちが人々を勇気づけて参加してもらい、その中から新たにリーダーが生まれて……その繰り返しで運動が大きくなるの」

ユキさんは紙を取り出し、図をかき始めました。
「この徐々に広げていくやり方を、スノーフレークリーダーシップというの。スノーフレークは雪の結晶のこと。中心から広がっていく形でしょう。カナメ一人でやろうとしたら、きっと疲れて途中でだめになるよね。これをドットリーダーシップという。みんながバラバラの方向を見ていてもだめ。これはバラバラリーダーシップ」

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一人で頑張るのでもなく、バラバラでもなく、つながりを徐々に広げていくスノーフレークリーダーシップ。それがコミュニティ・オーガナイジングを成功させるカギだとユキさんは言いました。

「去年の学級委員のハヤトはドットリーダーだ」とカナメは言いました。「みんなでバラを育てるはずだったのに、いろいろ係をやって、一人で世話してたの。バラは育ってたけど、ハヤトが風邪でしばらく休んでた間に何本も枯れちゃった」
「そう、それがドットリーダーの弱み。一人でやってたら、その人がいなくなると活動は止まっちゃう。カナメはハヤトを見ていてどう思った?」
「一人で大変そうだけど、一人でやりたいのかなと思って何もしなかった。そのうちバラのことも忘れてた」

「逆に、うまくスノーフレークができていた人を見たことはある?」
「ミナ! 去年の募金運動の委員長だった子。クラスごとに協力してくれる人を見つけて、その人たちが各クラスでお金を集めていて、いままでにないくらい集まったんだって。ミナちゃん別にしっかり者って感じじゃないのに、びっくりしたよ」
「そう。完璧なリーダーでなくていいんだよ。人間誰しも弱いところがある、そこを補いあう人たちでコミュニティを作っていくと、一人でやるよりもずっと大きなことができる」
「私も苦手なことたくさんあるけど、みんなをオーガナイズできるのかな」
「できるよ! 一緒に学んでいこう。自転車に最初から乗れる人はいないよね。何度も練習して、何度も転んで、乗れるようになる。コミュニティ・オーガナイジングも同じ。やってみて、転んで、またやってみて、できるようになるんだよ」

【スノーフレークリーダーシップとは】
企業活動では人は「コスト」として見られることがありますが、コミュニティ・オーガナイジングでは人はあくまでも「資源」。増えれば増える程よいものです。そのため、たくさんの人が参加できる組織であることが大切です。

目指す形はスノーフレーク(雪の結晶)リーダーシップ。リーダーシップとは、他のリーダーを育成することです。そして、今度はその育成された人がさらに他のリーダーを育成します。これが続いていくことで、たくさんの人が参加できる、大きな動きを作れる組織になっていきます。

行動を起こすとき、あなたは中心にいる「ドットリーダー」かもしれません。あなたの成功は他の人たちのリーダーシップを育めるかどうかにかかっているのです。

スイミーはコミュニティ・オーガナイジング

いいことを思い出した、という表情でユキさんが問いかけました。
「カナメ、『スイミー』って国語の教科書で読んだ?」
「読んだ!」
「あれが、まさしくコミュニティ・オーガナイジングだよ。小魚たちは一匹では弱いけど、みんなで一緒に泳げるように訓練して大きな魚の形を作ったら、怖い敵を追い払うことができる」
「そっか!」
「そしてスイミーは黒くて最初は小魚たちと色が違うから仲間に入れなくてひとりぼっちだったけど、黒いという個性を生かして大きな魚の目になったでしょ。コミュニティ・オーガナイジングでは一人ひとりの違い、持っているものを活かすことを大事にしてるんだよ」
「スイミーができたのなら、わたしにもできる気がしてきた!」

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【コミュニティ・オーガナイジングにおけるリーダーシップとは】
リーダーシップの定義は多様ですが、コミュニティ・オーガナイジングでは「不確実な状況の中、他者が目的を達成できるようにする責任を引き受けること」と定義しています。一人で孤高に引っ張るのではなく他者と関係を作り、他者の力を引き出していくことが、求められるリーダーシップなのです。そしてこの定義は、1世紀のエルサレムの賢人ラビ・ヒレルが提示した3つの問いから来ています。

――もし、私が私のためにあるのでなければ、私は「誰」か?
これは「自己中心的であれ」と言っているのではなく、「あなたは何者ですか?」という問いです。他者を導きたければ、自分の価値観、資源、志をはっきりと理解していなければなりません。

――私が私のためだけにあるのなら、私は「何」なのか?
「何」という「物」ではなく「人」であるためには、私たちが他者との関係の中で生きていることを認識することが大事です。私たちが目的を実現できるかどうかは、他者の能力を引き出すことにかかっています。

――そして、もし今でなければ「いつ」なのか?
私たちは行動することなしに、効果的に行動することを学べません。学びは、行動から生まれるものです。行動しなければ変化は起きません。

ヒレルの言葉は、リーダーシップとは自分、他者、行動が相互に関わり合って生まれるものだということを示しています。

リーダーシップが特に必要とされるのは、問題が何もない状態よりも、混乱し、解決が難しく、予想不可能な状況においてです。不確実な状況に適応し、創造的になることが必要な状況です。したがって、リーダーシップは「チャレンジング」であり、恐れを伴います。そこには3つのチャレンジがあります。

・困難な状況に対応するために「知識やスキル」を学ぶ(手のチャレンジ)
・自分の持てる資源を使って困難を解決する「方法を考える」(頭のチャレンジ)
・困難な状況に立ちむかい、他者にも同じ行動を促せるよう「勇気、希望」を見つける(心のチャレンジ)

また、ヒレルの言葉が「答え」ではなく「問い」になっていることも重要です。リーダーシップには「知る人」であることより、「学ぶ人」であることが大切だと言っているのです。誰も未来に何が起こるか知りません。しかし迫りくる未来にどう対処するか学ぶことはできます。リーダーシップは事態を管理することではなく、事態に適応することです。そして地位によって生まれるものではなく、実践によって生まれるものです。会社や組織の中で地位があっても全くリーダーシップを発揮していない人もいます。一方、地位がなくても多くの人とともに問題解決に取り組んでいる人もいます。

さて、カナメは混乱した不確実な状況の下、経験や知識もなく、地位もない立場で、どう同志たちをオーガナイズして自由な昼休みを取り戻すのでしょうか。


※イラスト:川合翔子
※本書の序章は以下リンクからお読みいただけます。


コミュニティ・オーガナイジング――ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』鎌田華乃子

「仕方がない」から「仕方がある」へ。
ハーバード発、「社会の変え方」実践ガイド。

おかしな制度や慣習、困ったことや心配ごと……社会の課題に気づいたとき、私たちに何ができるだろう? 普通の人々のパワーを集めて政治・地域・組織を変える方法「コミュニティ・オーガナイジング」をストーリーで解説。

〈構成〉
序章「仕方がない」から「仕方がある」へ
(PART I METHOD 変革の起こし方)
第1章 コミュニティ・オーガナイジングとは何か
第2章 パブリックナラティブ――ストーリーを語り、勇気を育む
第3章 関係構築――価値観でつながる
第4章 チーム構築――三つの成果、三つの条件、三つの決めごと
第5章 戦略作り――みんなの資源をパワーに変える
第6章 アクション――リーダーシップを育てる
(PART II CASE 実践!コミュニティ・オーガナイジング)
第7章 人々の力を引き出す
第8章 身近なことから変化を起こす
第9章 政治を動かし、法を変える

〈著者〉
鎌田華乃子(かまた・かのこ)
特定非営利活動法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン理事/共同創設者
神奈川県横浜市生まれ。子どもの頃から社会・環境問題に関心があったが、11年間の会社員生活の中で人々の生活を良くするためには市民社会が重要であることを痛感しハーバード大学ケネディスクールに留学しMaster in Public Administration(行政学修士)のプログラムを修了。卒業後ニューヨークにあるコミュニティ・オーガナイジング(CO)を実践する地域組織にて市民参加のさまざまな形を現場で学んだ後、2013年9月に帰国。特定非営利活動法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)を2014年1月に仲間達と立ち上げ、ワークショップやコーチングを通じて、COの実践を広める活動を全国で行っている。ジェンダー・性暴力防止の運動にも携わる。現在ピッツバーグ大学社会学部博士課程にて社会運動に人々がなぜ参加しないのか、何が参加を促すか研究を行っている。


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