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「進化型組織」を考える8つの視点 : ソース原理・ティール組織専門家 嘉村賢州氏によるブックリスト


「日本の人事部 HRアワード2024」書籍部門において、『ヒューマノクラシー──「人」が中心の組織をつくる』と『フリーダム・インク──「自由な組織」成功と失敗の本質』の2冊が同時に入賞!

現在、各地の書店でこの2冊を含む【「進化型組織」を考える8つの視点】というブックフェアを開催中です。このブックフェアの選者は『ティール組織』解説者、『ヒューマノクラシー』日本語版序文の執筆者、嘉村賢州さん。

2018年のティール組織の発売以来、従来の延長線上ではない組織の形、「進化型組織」を模索する動きが広がりを見せています。
本ブックフェアでは、包括的かつ横断的な視点や事例を提供する本として、「(進化型組織の)世界観の理解/パラダイムの構築」「具体的な事例」の本がリストアップされています。そこに、嘉村さんが探求の過程で導き出した「進化型組織を考える8つの視点」が曼荼羅上に表現されています。

【進化型組織を考える8つの視点】
・新しいパラダイムの解像度を上げる
・組織構造
・個人変容とリーダーシップ
・集合知を生かす
・お金
・ホールネス
・対立を力に
・パーパス

本記事では、組織論だけでなく、リーダーシップやお金との向き合い方、パーパスなど、幅広いテーマに関する選りすぐりの本を、嘉村さんの解説を交えながらご紹介します。
興味を引かれた本からぜひチェックしてみてください。

選者からブックフェアへのメッセージ

社会の変化が加速している現代、従来型の組織構造やプロセスは限界に直面しています。今回のブックフェアでは従来の延長線上にはない組織のあり方を「進化型組織」として提案しています。
事例としては、古くからその個性的な運営の仕方で影響を与えてきたセムコ、W.L.ゴア、モーニングスターから、最近注目されているネットフリックス、ザッポス、ハイアール、日本企業ではサイボウズなどを取り上げます。それらの具体的な姿を見ていくことは、私たちに希望を与えてくれるでしょう。
しかし、これらのユニークな組織は形態が多種多様であるため、実際に変革の旅路を進もうと思っても、簡単ではないかもしれません。
そこで本フェアでは、「進化型組織を考える8つの視点」として、実際に組織を変革する上で役に立つ切り口を設定し、参考となる書籍をセレクトしました。
ぜひ読者のみなさんの業種、業態、規模、構成メンバーにふさわしい、唯一無二の組織を模索するヒントにしてください。

選者:嘉村賢州
場づくりの専⾨集団NPO法⼈場とつながりラボhome's vi代表理事。
「未来の当たり前を今ここに」を合⾔葉に個⼈・集団・組織の可能性をひらく⽅法の研究開発・実践をおこなっている。解説書に『ティール組織』、共訳書に『すべては1⼈から始まる』『⾃主経営組織のはじめ⽅』(以上、英治出版)、共著書に『はじめてのファシリテーション』(昭和堂)などがある。


世界観の理解/パラダイムの構築

本ブックフェアのテーマは「進化型組織を考える」です。
では、どのように進化していくのでしょうか。

トップダウンからボトムアップ? 一極集中から分散型? 機械的な組織から生命のようなな組織? 組織中心から人間中心? あるいは意識レベルがより高い組織への変化でしょうか? 

変化の流れに注目すると、未来の姿が朧げながらも浮かんでくるのかもしれません。本カテゴリーでは、大局的な視点を与えてくれる書籍を取り上げました。一見すると、旧パラダイムと新パラダイムの二項対立に見えるかもしれません。しかし今世界で起こり始めているのは、どちらか一方ではなく、統合の組織論なのです。


事例

老舗から最新の事例まで、多様な切り口でピックアップしました。
旧パラダイムの組織は、機械のメタファーで例えられるように、再現可能性を追求して構築されている組織が多く見られます。また、流行りの方法論をこぞって導入しようと試みた結果、多くの組織が似たような構造とプロセスをたどることも珍しくありません。

一方で進化型組織は、業態や構成メンバーの特性、置かれている環境に合わせ、それぞれの個性が花開いています。
例えば臓器移植をする際、場合によっては拒否反応を起こすように、多様な制度を部品のように取り入れるときに抵抗を受けることもあります。その多様性が面白くもあり、難しい点でもあります。多様で豊かな事例を眺めていきましょう。


カテゴリ1. 新しいパラダイムの解像度を上げる

自転車に乗れるようになる前に、自転車に乗っている感覚を理解することは困難です。同じように、新パラダイムの組織運営の感触を掴むことは簡単ではないでしょう。従来の枠組みの延長線で捉えてしまい、そのために失敗につながってしまうケースも多く見られます。

このカテゴリーでは、新ニューパラダイムの組織のダイナミズムを理解するのに役に立つ書籍を取り上げました。自然や菌類のメカニズムといった他領域からも学べることがたくさんあります。


カテゴリ2. 組織構造

従来型の組織は上位下達のヒエラルキー構造が一般的であり、箱物組織とも呼ばれる形態で、働く人が1つの部門に所属するかたちの組織運営が主流でした。
一方、進化型組織では、上下関係に基づく組織構造を超えた、多様な組織構造が発明されています。その流動的で、豊かなダイナミズムをぜひ学んでいきましょう。


カテゴリ3. 個人変容とリーダーシップ

進化型組織では、権限に基づく指示命令系統で人を動かすという従来型のアプローチが減っています。共感や共鳴で動く仕組みでは、今まで以上にリーダーシップが問われてくるでしょう。
リーダーシップについても、従来のカリスマ的なリーダーシップから、ファシリテーション型のリーダーシップや弱さをありのままに出すリーダーシップへと、その理想像が変化してきています。
同時に、近年ではスキルの向上だけでなく、内側の変容を促す自己変容の重要性も強調されるようになりました。


カテゴリ4:集合知を生かす

従来型の制御統制モデルは、トップや経営層がビジョンや戦略を策定し、現場に下すというやり方でした。変化が激しい現代においては、このモデルではレジリエンスに欠けると言えます。
対照的に、進化型組織では、現場にいる個人の多様性を生かした組織づくりに重きを置きます。組織が集合知を効果的に活用することで、真の意味で変化に強く、イノベーションに溢れる組織へと進化していきます。


カテゴリ5. お金

お金は人類が発明した、偉大なシステムの1つです。
そのおかげで様々な恩恵があるのは事実ですが、逆に人間関係を分断したり、不幸を引き起こす原因ともなっています。
組織内の揉め事の元をたど辿るとお金に紐づく場合は多く、すぐにでも私たちのお金の使い方を発明し直さなければなりません。
そもそもお金とはなんでしょうか? 新しい時代の給与分配や予算のあり方も探求していきましょう。


カテゴリ6.ホールネス

従来の組織運営では組織の論理が優先され、個人の論理は後回しになるのが一般的でした。機械の部品のように、組織の目的や機能に貢献できる人が雇われ、働く人もそれに合わせて仕事をしていました。
しかし、最近では1人ひとりのかけがえのない人生を尊重する組織論が注目を集めています。
職場で仮面をつけることなく、ありのままで活動できる。安心・安全の環境が内なる情熱に火をつけて、組織の前進するエネルギーにつながっていきます。
個人の全体性を育む組織づくりのノウハウが充実しつつあるのです。


カテゴリ7. 対立を力に

組織が多様性を大事にし、個人に自由な権限を与えながら活動を進めようとすると、意見の食い違いや対立は避けようがありません。むしろ個人を大切にしている証拠として、否応なく対立が現れてきます。

しかし、多くの組織や個人は対立にネガティブな印象を持ちがちで、その結果、個人を抑圧するか、力ずくで対立を解決しようとする傾向があります。
進化型組織では対立は歓迎され、創造を育むものだと認識されます。対立を恐れるのではなく歓迎することで、組織力は急激に高まっていくのです。


カテゴリ8. パーパス

私たちは何のためにその組織に集まっているのでしょうか。目的を共有することはその組織活動のエネルギー源となります。

その文脈で注目されている「パーパス」ですが、『ティール組織』の著者フレデリック・ラルーはこう警鐘を鳴らしています。「現在のビジネス活動の目的は生存と最大化に偏っており、目的を掲げることが道具化している」と。
働く1人ひとりの内側の熱量とつながり、集団としてのインパクトを生み出していくために、パーパスとの関わり方を根本から見直し、再構築していく必要があります。