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ミーティングと目標設定って本当に必要なんだろうか?

東北で石鹸屋を立ち上げて4年。少しずつスタッフの数が増えていくなかで、組織づくりについて独自の考えをもつ著者。お客さん、働く人、働く人の家族の幸せのために、経営者ができることとは?

「それで大丈夫なの?」と思われそうな店舗運営

女川にお店を開き、アルバイトなどを募集して一年半。現在スタッフ数は8名になりました。そのほとんどが女性。そしてほぼ全員が女川町居住。

主婦でパートをされている方から、高校一年生のアルバイトまで、年齢も様々。さらに、ずっと地元、Iターン、Uターンなど、これまでの経歴も、経験してきた職業もバラバラです。

また、出勤と退社の時間も人によってまちまち。みんなの都合を聞きながらシフトを組み、その中での交代も自由にしています。

朝礼や定期的なスタッフミーティングもありません。そして、売り上げ目標も実はまだなく、昨年の売り上げを目安にするものの、それをノルマとはとらえていません。

こうして書き並べると、「それで大丈夫なの?」と思われるかもしれません。でもいまのところ、これで結構うまくいっていると感じています。女性スタッフたちの笑い声と活気があふれる店内は、とてもよい雰囲気に包まれています。

一般的な企業と比べてちょっと特徴的な、三陸石鹸KURIYAの店舗運営方法。その中で、今回は「目標設定」と「ミーティング」の考え方についてお話ししたいと思います。

目標って必要なの?

いまのところ、売り上げ目標は、経営をしている自分の中にはあるものの、スタッフがそれを背負うことはありません。あったほうがいいのかな?という感覚はあるものの、それをノルマのように押し付け気味にしない自信がなく、みんなには目標を発表していません。

「目標を掲げて達成のために頑張る」
当たり前のように思えますが、これって本当に必要なんでしょうか?

数字には、良くも悪くも強い力があります。
テストの点数、偏差値、売上、年収…それらは、頑張るための目安になると同時に、数字にとらわれてしまうこともあると思うんです。

もちろん、目標に向かって頑張るのは良いこと。でも、個々の接客の中で、「もう一つ売り込もう」とか、「お買い上げ、一個だけかぁ」とか思ってしまう瞬間が出てしまう気がしています。

そもそも、石鹸を作って売っている僕たちの目的は、お客さんを幸せにすること。働いている自分たちや、自分たちの周りの人、地域を幸せにすること。これがなにより大事。

数値の目標を設定しても、それらの目的を忘れることなく日々の仕事に取り組めると思えるようになったら、目標設定を導入したいと思っています。

ミーティングしたい?

次はミーティングです。朝礼も終礼も定例ミーティングもなし。なぜミーティングをやらないかというと、それが仕事の効率をあげたり、モチベーションを与えてくれたりした記憶があまりないからです。

大人数を同時に拘束し、人件費という大きなコストが掛かる。にもかかわらず、ミーティングって、どうも参加者からあまり歓迎されない感じがありませんか?

石鹸工房KURIYAの事業所は店舗1か所。なので、みんなとの情報共有はノートがあれば十分。お店には、タスクとマニュアルをまとめたファイル、そして日々起こる事を書き込む日誌(ほぼ日手帳)の二冊が置いてあります。

それらを僕も含めた全員が、自分のタイミングで、読みたいときに読む。そのほうが読み手のストレスがなく、リアルタイムに情報共有できる。

思いきってミーティングをやめて一年が経ちましたが、いまのところ不具合は感じていません。

ところが最近、スタッフから「ミーティングがあった方がいいのでは?」という声があがりました。話を聞くと、かなり本気の様子。

しかし、出勤時間はみんなバラバラ。そこで、「社会人だけで集まって話し合いをして、学生スタッフにはあとで伝えたら?」と提案。

しかし、「全員で集まれないと意味がないんです」と即却下。
どうやら、ミーティングに期待することが、僕とスタッフでは違うようです。こういうときは、とことんスタッフに任せる。気にはかけますが、何か言われない限り、口出しはしません。

どんな内容でミーティングが組まれるのか、楽しみにしながら待とうと思います。

組織はみんなで創り上げていくものだ

お店のスタッフはみんな働き者で、お客さんのこと、他のスタッフのことを積極的に考えてくれています。なので、店舗運営のほとんどは彼女たちに任せて、何か足りない部分があったらアシストする。そういうスタンスで十分やっていけると思っています。

僕は以前、人事のコンサルタントとして働いていたことがあり、組織内でのルールづくりや、マネジメントの施策はいろいろと頭には入っています。でも、それらをそのまま使うのはなんだか違和感があります。

なぜなら、そうしたルールや施策は基本的に、「男性中心に設計されている」と思うからです。男性は、数字が好きで、数値目標も大好き。良い「結果」は大きなモチベーションになる。一方で女性は、「結果」よりも「プロセス」を大事にする。

あくまで僕の感覚ではありますが、エンジニア、営業、コンサル、ボランティア、そして経営者と色々な仕事をしてきた中で、こういう傾向をよく見てきました。

仕事以外でもそう。女性と買い物に行くとよく分かります。
買い物に行って何も買わずに帰ってくるなんて、結果重視の男性(僕)には信じられないこと。でもプロセス重視の女性にとっては、買い物に行くことに意味があるのです。つまり、買わなくてもいい。

ミーティングも、男性にとっては「結果」を出すための作戦会議です。みんなで目標を追う作戦を考えることは、狩猟時代から続く男性特有の楽しみなのかもしれません。

では、女性がミーティングに期待することは?
それはまだ分かりません。人間関係を築くことなのか、仕事の内容の共有なのか、それともまったく違うことなのか。ミーティングを再開することで、お店やスタッフ一人ひとりにどんな変化が生まれるのか、僕はとても楽しみです。

組織とは経営者が全部決めるものではない。僕も含めたスタッフ全員で知恵を出し合い、試行錯誤しなら創りあげていくもの。そんなことを思いながら、今日も石鹸をつくっています。

厨勝義(くりや・かつよし)
三陸石鹸工房KURIYA代表、株式会社アイローカル代表取締役。1978年久留米市出身。工作機械メーカー、国際教育NPO(アメリカ)、DREAM GATEプロジェクトを経て翻訳事業会社を経営。東日本大震災後に宮城に移住し、南三陸町戸倉地区を拠点に復興支援活動を開始。起業家創出・育成支援、民間企業の力を活用した震災復興事業の企画などに注力した後、2014年に株式会社アイローカル設立。2015年に南三陸石けん工房(現・三陸石鹸工房KURIYA)をオープン。女川町女川浜在住。

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