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ベトナムで、欧州や南米の人と一緒に、南アフリカの人から英語を習う

ベトナムで英語教室に通ったら、生徒は欧州や南米の人たちがたくさん。毎回の授業では各国の文化や習慣の「違い」がよく話題にのぼる。しかし「同じだな」と感じることもしばしば。違いだけでなく共通点を見つけることからも異文化の理解は進むのではないか。

ベトナムで英語以外に人気の外国語は

ベトナムに来て感じたのは、英語を話せる若い人が多いということである。ホテルやレストランはもちろんのこと、ちょっとしたカフェの店員や町でたまたま話したベトナム人もちゃんと英語ができる。

ちなみに、日本語を話す人も少なくない。散歩中に「こんにちは」と話しかけてきたベトナム人の若い男性がいた。彼は日本語のガイドをしているそうだが、以前は福井県に住んでいてコマツの工場で数年働き、そこで日本語を覚えたという。

彼の話しだと、ベトナムで人気の外国語は、ダントツで英語。それに中国語、韓国語、フランス語、スペイン語などが続き、日本語も同じくらい人気だと言う。

人気の決め手になるのは、やはり仕事に役立つかどうか。英語と中国語のニーズはよくわかる。そしてかつての統治国であるフランスの影響力が大きいことも、よく感じる。とりわけ、インフラ系のフランス企業の存在感が大きい。そして韓国企業の躍進には驚くばかりで、自動車、電気機器からホテル、カフェ、ネット企業まで実に多くの企業が進出している。

意外だったのはスペイン語。南米の企業の進出が多いらしい。いわれてみれば、ハノイで一番おいしいと評判のステーキ屋はアルゼンチン人が経営しているし、ハノイで開催される国際見本市の案内を見たら、やたらキューバ(母語はスペイン語)の企業が多かった。

ベトナムで欧州や南米の人と一緒に、南アフリカの人から英語を習う

ハノイに住んでやろうと思っていたことの一つは、英語を習うことである。ベトナムの方には大変申し訳ないが、ベトナム語は手に負えない。「こんにちは」と「ありがとう」と、そして数字程度は覚えたが、そこで止まったままだ。英語をもっと話せるようになりたいとずっと思っていたし、それに若いベトナム人と一緒に英語を習うことができたら面白そうだと思っていた。

ところが、僕が住むことにした西湖周辺は欧米の人が多く住む地域である。街を歩いていても半分くらいは欧米系の人だ。英語を習えるところを探していたら、早々に英語学校が見つかり、早速通うことにした。ただしベトナム人は皆無に等しく、当初のイメージとは大きく違う展開である。

先生は南アフリカ人。授業は午前と夜に行われる。午前中のクラスは見事に女性ばかりだ。一方で夜のクラスはこれも見事に男性ばかり。つまり、ここは欧米から赴任してきた人が住む地域で、午前中は子どもを学校に行かせた後のお母さんたちが通っていて、夜は仕事を終えた男性陣が通うという棲み分けになっている。近くにインターナショナルスクールが多く、子どもを持つ人が暮らしやすい場所なのであろう。

実際に通ってみると、何より教室の中の国籍がまちまちなのが楽しい。フランス、スペイン、ドイツ、ロシア、スイス、アルゼンチン、コスタリカ、ブラジル、コロンビア、韓国、日本などなど。会話をすればすぐに国ごとの習慣の違いになる。さながら、英語を習っているのか世界の多様な生活様式を学んでいるのか、よくわからなくなる面白さがある。

授業で驚くのが、皆よくしゃべることだ。積極的にというよりも、恥ずかしいと思っていない様子である。間違えるのが平気でありなのである。英会話という意味ではここに来る人は実によく英語をしゃべるが、間違えも一杯ある。たとえば「7時半」を「セブン・サード」などと普通に言う。それを先生が指摘し、一つ覚える。

分からないことがあれば「分からない」とはっきり言う。それに対し、先生も全体の進行が滞るのを厭わず、ひとりひとりの生徒の疑問に丁寧に答えていく。つまり、うまく話せないこと、間違えること、分からないことが平気なのだ。それもそのはず、ここは学ぶ場である。

これは新鮮な発見であった。うまく話せるか分からなくても、とにかく話してみる。それによって一つ覚えられる。分からないことをその場で聞くことで、また一つ覚えられる。この南アフリカの先生は一人ひとりの力に応じて進めてくれるので大いに助かっているが、一緒に学ぶ欧州や南米の人の「学ぶ姿勢」こそが、僕にとって貴重な学びとなっているのだ。

共通点から異文化を学ぶおもしろさ

英語教室では、国ごとの違いを楽しむ一方で、国籍を越えた共通点を感じることも多い。主婦の方々が集まる午前のクラスでは、ベトナムでの洗濯の話しや外出するときの服装の話しで盛り上がる。スペイン人の女性が、子どもが外で遊んで服を汚してきたことを話すと、もうみんなが賛同して会話が延々と続く。こんな時は、まるで「ママ友」の中に紛れ込んだかのようで、僕は急に居心地の悪さを感じる。

夜のクラスでは話題がまったく違ってくる。授業に遅刻してきたドイツ人が、「ボスにレポートする資料をつくってて…」と遅れた理由を話すと、スペイン人は「我が家のボス(妻)も厳しいんだよね」と返し一同大笑い。おもわず、ここは新橋かと錯覚してしまうかのような雰囲気になる。

この「国籍を越えた共通点」は普段生活していても感じることがある。先日、雰囲気のよいカフェにいると、ベトナム人の女子高生3人組が入ってきて、店内を動き回り、キャッキャ、キャッキャと写真を撮り始めた。あたかもお客は自分たちしかいないかのような態度で、店の雰囲気は台無しである。

その時、僕が練習中のベトナム語を口にしていたら、目ざとく耳にした3人組が、またまたキャッキャ、キャッキャ。今度は急にこの異国のオジサンが楽しみの対象に変わる。「箸が転んでもおかしい年頃」である彼女たちの振る舞いは、日本の女子高生とおんなじだ。そういえば、「どこの国に行っても銀行員はみな同じ雰囲気を感じる」という話しを思い出す。

国や文化によって違いもあれば共通点もあるのは当然といえば当然だ。こちらに来た頃、他国の人と日本人、あるいはベトナム社会と日本社会の違いを見つけることで、日本の新しい見方ができればと思っていた。

その一方で、お互いの共通点を見つけ、引き算をするかのようにその共通点を引いていくことで、「日本ならでは」を見いだせる可能性も感じている。むしろ共通点を見出すことで新たな発見があり、それが他文化を理解する近道なのかもしれない。

岩佐文夫(いわさ・ふみお)
1964年大阪府出身。1986年自由学園最高学部卒業後、財団法人日本生産性本部入職(出版部勤務)。2000年ダイヤモンド社入社。2012年4月から2017年3月までDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集長を務めた。現在はフリーランスの立場で、人を幸せにする経済社会、地方活性化、働き方の未来などの分野に取り組んでいる。(noteアカウント:岩佐文夫
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岩佐文夫「ベトナム、ラオス、ときどき東京」
岩佐文夫「ベトナム、ラオス、ときどき東京」
  • 15本

「海外に住んでみたい」という願望を50歳を過ぎて実現させた著者。日本と異なる文化に身をおくことで、何を感じ、どんなことを考えるようになるのか。会社員を辞め雑誌編集者という仕事も辞め、人生100年時代に向けてキャリアのモデルチェンジを図ろうとする著者が、ベトナムやラオスでの生活から、働き方や市場経済のあり方を考える。

コメント (1)
6年ほど前ですが仕事でベトナム(ハノイ、フエ、ダナン、ホーチミン)に行ったとき、出会った若いベトナム人の女の子の多くが日本語を勉強していて、片言の日本語で楽しく会話した思い出があります。懐かしくなりました。
共通点を引き算していった後に残るもの...たしかに!相違点を見つけるより、ふるいにかけて残ったもののほうがカラーが強いのかもしれませんね。
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